年間を通じて「静」の動き。言わば「泰然自若」の1年だった。SGはF休みのグラチャン以外の6節を走って4優出。また、G1は優出5回V1(2月・びわこ地区選)。勝ち運には恵まれなかったが、安定感はピカイチと言える。レースも悟りを開いたかのような自然体。スピードに経験値が加わり総合力は一番だ。

　今年はSG優出2回、G1優出3回でＶはゼロ。最も惜しかったのは真夏のSGメモリアル(蒲郡)での優勝戦1号艇だった。差されて差し返してまた差されの2着。いち早くペラを修正してコースを問わず勝つ。直前のSGチャレンジカップで切ったFは痛いが、SG初Vがグランプリという例は少なくない。最後に流すのは嬉し涙か？！

　10年前の春、25歳で総理杯(多摩川、現クラシック)をSG初出場初Ｖの快挙、それも優勝戦は3コースからの強ツケマイだった。久しぶりのSG優勝となった先月の芦屋チャレンジカップでも前づけ艇を内に入れて3コースから全速でまくり差したレースが予選中にあった。イン戦以外に自信が持てるところがあるのは大きい。

　今年は3月のSGクラシック(尼崎)までG1以上で優出はなかったが、ベスト18を外すことはなかった。そして、5月の住之江オール大阪で優勝すると若松周年、グラチャン(宮島)で優出。秋になってからは三国周年、住之江高松宮記念、ダービー(浜名湖)で優出、びわこ周年V。精神力の強さは王者ならではのものがある。

　今年は不完全燃焼の1年だったと言えるか。SG優出1回、G1優出5回も優勝戦の1号艇は一度もなかったということが総てをモノ語っている。コースを問わず着を取ってくるウデは右に出る者がいないだろう。グランプリは過去V2。それも隔年に優勝しているので今回は優勝する順番だ。

　正月のオール大阪Vで幸先のいい滑り出しを見せた。ただ、エンジンがかかったのは7月のSGオーシャンカップ(三国)で優勝戦2着の結果を残し、勝負どころの10月の住之江高松宮記念Vで4年ぶりのグランプリ出場を確実なものとした。ペラをあまり叩かずターンで勝負するのは技術の高い田中ならではの戦略と言える。

　地元開催の宮島グラチャンを含むSG優出2回にG1優出4回。「相変わらず詰めが甘い」と苦笑いするが、それでもグランプリに出場するのだから渋太い走りに変わりはない。かつては進入で積極的に動くシーンもあったが、近年は枠なり基本で着をまとめる策をとっている。それがSG舞台で普通にできるのが強みだ。

　大きな勝負どころと位置づけた地元開催のSGオーシャンカップで予選落ちを喫してしまったが、今年はSG優勝こそないものの優出2回、G1優出3回を果たし、ギリギリながらグランプリ出場を決めた。道中の競りに強いのは変わらない武器。出力低減モーターの調整に自信はなさそうだが、レースが始まれば話は別なのだ。

　出力低減モーター対策に独特のペラ調整をいち早く取り入れ、昨年のグランプリシリーズ準優のFで半年間G1を走れなかったにもかかわらずSG優出1回、G1優出4回V１。ペラ調整に自信がある分、レースに集中できたのだ。モーターが噴くので攻めにも幅が出てきた。ちなみに一般戦ながら、出力低減導入後の住之江でV2だ。

　今年は序盤に宮島→三国とG1周年を連覇。トライアル2ndスタートは必至と思われたが、地元開催のSGオーシャンカップを含めてSG優出なしでG1は宮島、三国以外では優出2回だけ。完全に尻すぼみだった。それでも序盤の貯金が生きてグランプリ行きを決めた。どちらかというと気持ちで走るタイプ。攻めるレースに期待だ。

　昨年のSGグランプリで初出場V。ファイナルは大外からの差し切りだった。そして、今年もSG優出ゼロ、G1優出2回V1とモノ足りない成績ながらも出場決定。少し無理な体勢から突破したり、逆転不可能な差を詰めて交わしてしまう異次元のターン。相手にとってイヤな存在だ。1stステージを突破すれば昨年の再現があるか？！

　今年SG優出がなくG1優勝は大村周年の1回。そこで見事V。あとは一般戦V5でグランプリ出場18番目に滑り込んだ。「18番目なので気楽に走れる。それを生かしたい」と6年ぶりのグランプリに闘志を見せる。「魅せるレースをしたい」と常に口にする男が注目度一番の大舞台で大胆な走りを繰り広げてくれそうだ。